宇宙の深淵へ挑み続ける男。星 出 彰彦が語る「月面探査時代」の覚悟と、日本が宇宙で勝つための条件

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宇宙の深淵へ挑み続ける男。星 出 彰彦が語る「月面探査時代」の覚悟と、日本が宇宙で勝つための条件
宇宙の深淵へ挑み続ける男。星 出 彰彦が語る「月面探査時代」の覚悟と、日本が宇宙で勝つための条件
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星 出 彰彦この名前を聞いて、日本の宇宙開発の黄金期を思い浮かべない者はいないだろう。国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在や船外活動、そして日本人2人目となるISS船長(コマンダー)としての重責を果たした彼が今、新たな時代の岐路に立っている。2026年、人類が再び月を目指す「アルテミス計画」が本格化する中、ベテラン宇宙飛行士が静かに語り始めた言葉には、単なるノスタルジーではない、未来への強烈な危機感と期待が満ちていた。

宇宙飛行士としてのキャリアが30年近くに及ぼうとする今も、星 出 彰彦の眼差しは現役そのものだ。若手飛行士の育成から、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の運用計画に至るまで、彼の知見は現在のJAXA(宇宙航空研究開発機構)にとって欠かせない羅針盤となっている。しかし、彼が真に見据えているのは、自らの4度目の宇宙飛行ではなく、日本が世界の宇宙開発競争でいかにして独自の地位を築くかという、より大きなグランドデザインだった。

アルテミス世代へのバトンタッチ:米田・諏訪両飛行士への期待

The Legend of Heroes: Trails from Zero

2026年現在、日本の宇宙開発は大きな転換期を迎えている。新たに加わった米田あゆ飛行士と諏訪理飛行士が基礎訓練を終え、いよいよ具体的なミッションアサインを待つ段階に入ったからだ。彼ら「アルテミス世代」の台頭を、ベテランはどう見ているのか。

「彼らのポテンシャルは極めて高い」と、星出は語る。かつて自身がスペースシャトルやソユーズ、そしてクルードラゴンと、異なる世代の宇宙船を乗りこなしてきた経験から、次世代の飛行士たちには「柔軟性」が最も求められるという。ISSという確立されたインフラから、未開の月面へ。技術の進歩は凄まじいが、それに伴う不確実性も跳ね上がる。星出は、若手たちに対して単なる技術の伝承にとどまらず、想定外の事態を楽しむタフさを求めている。

現場主義を貫く男が目撃した「民間宇宙開発」の地殻変動

ここ数年の宇宙ビジネスの爆発的な成長は、かつての国家主導の枠組みを完全に塗り替えた。スペースXの「スターシップ」が実用化に向けて突き進み、民間企業による独自の宇宙ステーション建設が現実味を帯びる中、国家の宇宙機関であるJAXAの役割も再定義を迫られている。

星出は、この変化を好意的に受け止めつつも、冷静な分析を忘れない。民間がインフラを担うことで、政府機関はよりリスクの高い、フロンティアの開拓にリソースを集中できるようになる。だが、それは同時に、安全基準や倫理観の担保をどう行うかという新しい課題を生む。「官民の境界線が曖昧になる中で、日本がどうリーダーシップを発揮するか。技術力だけでなく、外交力とビジョンが試されている」と彼は指摘する。

50代後半を迎えた肉体と精神:宇宙で生き抜くための「自己管理術」

宇宙空間という極限環境は、人間の肉体に容赦なく襲いかかる。骨密度の低下、筋肉の萎縮、そして宇宙放射線。50代後半となっても現役の宇宙飛行士であり続けることは、並大抵の努力では不可能だ。

「年齢を重ねることで、自分の身体の小さな変化に敏感になった」と星出は笑う。若い頃のような勢い任せのトレーニングではなく、科学的なアプローチに基づいた効率的なリカバリーと栄養管理。そして何より、メンタルの安定が不可欠だという。長期間の閉鎖環境でリーダーシップを発揮し続けるための秘訣は、「他者を聴く力」と「自分自身を客観視するユーモア」にある。彼のこの姿勢は、宇宙だけでなく、地上のビジネス社会におけるシニアリーダーたちにとっても大いに参考になるはずだ。

「月はゴールではない」:火星を見据えたゲートウェイ構想のリアル

世間の注目は月面着陸に集まりがちだが、星出の視線はその先にある火星へと向いている。月周回軌道に建設予定の「ゲートウェイ」は、単なる中継基地ではない。人類が深宇宙へ進出するためのテストベッドなのだ。

地球の磁気圏外に出るということは、ISSとは比較にならないレベルの放射線に晒されることを意味する。さらに、地球との通信遅延も発生する。トラブルが発生した際、地球からの指示を待たずに自律的に解決するシステムとマインドセットが不可欠だ。星出は、ゲートウェイでのミッション設計において、この「自律性」の確立が最も困難であり、かつ最も重要だと強調する。

日本の宇宙開発に必要な「失敗を許容する文化」への提言

日本の技術力は世界トップレベルにある。しかし、失敗に対する社会の不寛容さが、イノベーションのスピードを鈍らせているのではないかという懸念は根強い。数々のプロジェクトの成否を見届けてきた星出は、この問題に対して強い危機感を抱いている。

「宇宙開発に『絶対』はない。挑戦すれば必ず壁にぶつかる」と彼は言う。重要なのは、失敗を個人や組織の責任として追及することではなく、そこから得られたデータをいかに次の成功に繋げるかというシステム作りだ。2026年、世界がかつてないスピードで宇宙開発を進める中、日本がガラパゴス化しないためには、リスクを恐れずに打席に立ち続ける覚悟が、社会全体に求められている。 (出典: 星 出 彰彦(Yahoo!ニュース)