ネットの深淵に潜む「視覚的テロ」——なぜ私たちは今もあの不気味な画像に拒絶反応を示すのか
は す こらという言葉を聞いて、背筋が凍るような嫌悪感を抱く人は少なくないはずだ。蓮の実のコラージュ画像に端を発するこのネットスラングは、今や単なる悪ふざけの領域を超え、SNS時代における「視覚的ハラスメント」の象徴として再び議論の的となっている。特に生成AIの普及によって、意図せずこうしたグロテスクな集合体画像を目にしてしまう被害が急増しているのだ。
かつて掲示板サイトの片隅で局所的に流行していたは す こらだが、アルゴリズムによるおすすめ機能が裏目に出て、一般ユーザーのタイムラインに突如出現するケースが後を絶たない。心理学や脳科学の専門家からは、これが単なる個人の「好き嫌い」ではなく、人類が進化の過程で培ってきた本能的な警戒信号である可能性が指摘されている。
集合体恐怖症(トライポフォビア)の正体と脳のバグ

多くの人がこれらの画像に対して抱く強烈な嫌悪感は、医学的には「トライポフォビア(集合体恐怖症)」と呼ばれる。小さな穴やブツブツが密集したパターンを見たときに、動悸や吐き気、皮膚の痒みを感じる症状だ。
最新の研究によれば、この反応は脳の視覚皮質が過剰に反応することによって引き起こされるという。猛毒を持つ生物(ヒョウモンダコや毒蛇など)の模様や、感染症による皮膚の病変を避けるための、人類の生存本能が誤作動している状態とも言える。つまり、体が「危険だ、逃げろ」とアラートを出しているのだ。
生成AIの進化がもたらした「新たな脅威」

2026年現在、画像生成AIのクオリティは極限に達している。これにより、かつての手作業によるコラージュとは比較にならないほどリアルで、かつ生理的嫌悪感を極限まで高めた画像が瞬時に生成可能となった。
悪意あるユーザーがAIツールを使い、巧妙にカモフラージュされた不快画像を拡散する事例が報告されている。一見すると美しい花の画像や料理の写真に見えるが、拡大すると無数の微細な穴が配置されているといった、悪質な「トラップ画像」だ。これにより、知らず知らずのうちに精神的ダメージを受けるユーザーが増加している。
プラットフォーム側の対策と限界:フィルターは機能しているか

大手SNS各社も手をこまねいているわけではない。AIを用いた画像認識技術により、不適切なコンテンツを自動でぼかしたり、警告を表示したりするフィルター機能の導入が進んでいる。
しかし、規制と表現の自由の境界線は曖昧だ。自然界に存在する蓮の実や、蜂の巣といった画像まで一律に排除することはできないため、システムの判定基準は常に揺らいでいる。いたちごっこが続く中、ユーザー自身が自衛策を講じる必要性が高まっている。
なぜ人は「見たくないもの」を見てしまうのか?ネットの心理戦
嫌悪感を抱く一方で、なぜ私たちはこうした画像に引き寄せられてしまうのだろうか。心理学ではこれを「カリギュラ効果」や、不快なものへの好奇心(モビッド・キュリオシティ)と呼ぶ。
SNSのアルゴリズムは、ユーザーの滞留時間を最優先する。嫌悪感から一瞬スクロールの手が止まるだけでも、システムはそれを「関心がある」と誤認し、さらに類似のコンテンツを表示しようとする。この悪循環こそが、ネット上で不快なトレンドが長寿化する最大の要因なのだ。
デジタルウェルビーイングの未来:視覚的自衛権の確立へ
今後、私たちはデジタル空間における「見ない権利」をどのように守っていくべきなのだろうか。ブラウザの拡張機能や、デバイスのOSレベルでの画像フィルタリング技術の開発が急ピッチで進められている。
情報が過剰に溢れる現代社会において、自らのメンタルヘルスを守るためには、受動的にコンテンツを消費するだけでなく、能動的に視覚情報をコントロールするリテラシーが求められている。画面の向こうの悪意に振り回されないための、新しいデジタルライフのあり方が今、問われている。 (出典: は す こら(Yahoo!ニュース))